も血にただれてまっかになっております」と怖ろしそうにお話しいたしました。命は、
「ふん、よしよし」とおうなずきになりました。そして改めておじいさんに向かって、
「その娘はおまえの子ならば、わしのお嫁《よめ》にくれないか」とおっしゃいました。
「おことばではございますが、あなたさまはどこのどなただか存じませんので」とおじいさんは危《あや》ぶんで怖る怖るこう申しました。命は、
「じつはおれは天照大神《あまてらすおおかみ》の同じ腹《はら》の弟で、たった今、大空からおりて来たばかりだ」と、うちあけてお名まえをおっしゃいました。すると、足名椎《あしなずち》も手名椎《てなずち》も、
「さようでございますか。これはこれはおそれおおい。それでは、おおせのままさしあげますでございます」と、両手をついて申しあげました。
 命は、櫛名田媛《くしなだひめ》をおもらいになると、たちまち媛をくしに化けさせておしまいになりました。そして、そのくしをすぐにご自分のびんの巻髪《まきがみ》におさしになって、足名椎《あしなずち》と手名椎《てなずち》に向かっておっしゃいました。
「おまえたちは、これからこめをかんで、よい酒を
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