櫛名田媛《くしなだひめ》と申します」とお答えいたしました。
 命は、
「それで三人ともどうして泣いているのか」と、かさねてお聞きになりました。
 おじいさんは涙をふいて、
「私たち二人には、もとは八人の娘《むすめ》がおりましたのでございますが、その娘たちを、八俣《やまた》の大蛇《おろち》と申します怖《おそ》ろしい大じゃが、毎年出てきて、一人ずつ食べて行ってしまいまして、とうとうこの子一人だけになりました。そういうこの子も、今にその大じゃが食べにまいりますのでございます」
 こう言って、みんなが泣いているわけをお話しいたしました。
「いったいその大じゃはどんな形をしている」と、命《みこと》はお聞きになりました。
「その大じゃと申しますのは、からだは一つでございますが、頭と尾《お》は八つにわかれておりまして、その八つの頭には、赤ほおずきのようなまっかな目が、燃えるように光っております。それからからだじゅうには、こけや、ひのきやすぎの木などがはえ茂《しげ》っております。そのからだのすっかりの長さが、八つの谷と八つの山のすそをとりまくほどの、大きな大きな大じゃでございます。その腹《はら》はいつ
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