天皇の永《なが》い間のご病気を、たちまちおなおし申しあげました。そのために天皇はついにおん年七十八までお生きのびになりました。
 天皇は日本じゅうの多くの部族の中で、めいめいいいかげんなかってな姓《せい》を名のっているものが多いのをお嘆《なげ》きになり、大和《やまと》のある村へ玖訂瓮《くかえ》といって、にえ湯のたぎっているかまをおすえになって、日本じゅうのすべての氏姓《しせい》を正しくお定めになりました。そのにえ湯の中へ一人一人手を入れさせますと、正直《しょうじき》にほんとうの姓《せい》を名のっている者は、その手がどうにもなりませんが、偽《いつわ》りを申し立てているものは、たちまち手が焼けただれてしまうので、いちいちうそとほんとうとを見わけることができました。

       五

 天皇がおかくれになったあとにはいちばん上の皇子《おうじ》の、木梨軽皇子《きなしのかるのおうじ》がお位におつきになることにきまっておりました。ところが皇子はご即位《そくい》になるまえに、お身持ちの上について、ある言うに言われないまちがいごとをなすったので、朝廷《ちょうてい》のすべての役人やしもじもの人民たち
前へ 次へ
全242ページ中201ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング