っかに染まってしまいました。
 そのとき皇后のおそばには、口子《くちこ》の妹の口媛《くちひめ》という者がお仕《つか》え申しておりました。口媛《くちひめ》はおにいさまのそのありさまを見て、
「まあおかわいそうに、あんなにまでしておものを申しあげようとしているのに、見ている私には涙《なみだ》がこぼれてくる」
という意味を歌に歌いました。
 皇后はそれをお聞きになって、
「兄とはだれのことか」とおたずねになりました。
「さっきから、あすこに、水の中にひれ伏《ふ》しておりますのが私の兄の口子《くちこ》でございます」と、口媛《くちひめ》は涙をおさえてお答え申しました。
 口子《くちこ》はそのあとで、口媛《くちひめ》と奴里能美《ぬりのみ》の二人に相談して、これはどうしても天皇にこちらへいらしっていただくよりほかには手だてがあるまいと、こう話を決めました。そこで口子《くちこ》は急いでお宮へかえって申しあげました。
「まいりまして、すっかりわけをお聞き申しますと、皇后さまがあちらへお出向きになりましたのは、奴里能美《ぬりのみ》のうちに珍《めずら》しい虫を飼《か》っておりますので、ただそれをご覧《らん》
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