ものをいちめんに塗りつけて、人が足を踏《ふ》みこむとたちまち滑《すべ》りころぶようなしかけをさせてお置きになりました。
 そしてご自分自身は、粗末《そまつ》なぬのの着物をめし、いやしい船頭のようにじょうずにお姿《すがた》をお変えになって、かじを握《にぎ》って、その船の中に待ち受けておいでになりました。
 すると大山守命《おおやまもりのみこと》は、おひきつれになった兵士を、こっそりそこいらへ隠《かく》れさせておおきになり、ご自分は、よろいの上へ、さりげなく、ただのお召物《めしもの》をめして、お一人で川の岸へ出ておいでになりました。
 するとそちらの山の上にりっぱな絹のとばりなどが張りつらねてあるのがすぐにお目にとまりました。
 命《みこと》はそのとばりの中にいかめしくいすにかけている人を、若郎子《わかいらつこ》だと思いこんでおしまいになりました。それでさっそくその船にお乗りになって、向こうへおわたりになりかけました。
 命は船頭に向かって、
「おい、あすこの山に大きなておいじしがいるという話だが、ひとつそのししをとりたいものだね。どうだ、おまえとってくれぬか」とお言いになりました。
 船
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