頭の皇子は、
「いえ、それはとてもだめでございます」とお答えになりました。
「なぜだめだ」
「あのししは、これまでいろんな人がとろうとしましたが、どうしてもとれません。ですから、いくらあなたが欲《ほ》しいとおぼしめしても、とてもだめでございます」
 こうお答えになるうちに、船はもはやちょうど川のまん中あたりへ来ました。すると皇子《おうじ》はいきなり、そこでどしんと船を傾《かたむ》けて、命《みこと》をざんぶと川の中へ落としこんでおしまいになりました。
 命はまもなく水の上へ浮き出て、顔だけ出して流され流されなさりながら、

  ああわしは押《お》し流される。
  だれかすばやく船を出して、
  助けに来てくれよ。

という意味をお歌いになりました。
 するとそれといっしょに、さきに若郎子《わかいらつこ》が隠《かく》しておおきになった兵士たちが、わあッと一度に、そちこちからかけだして来て、命を岸へ取りつかせないように、みんなで矢《や》をつがえ構《かま》えて、追い流し追い流ししました。
 ですから命はどうすることもおできにならないで、そのまま訶和羅前《かわらのさき》というところまで流れていら
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