はありませんか。どうです、それでも私は悪人ですか」と、それはそれは大いばりにおいばりになりました。そして、その勢いに乗ってお暴《あば》れだしになって、女神がお作らせになっている田の畔《あぜ》をこわしたり、みぞを埋《う》めたり、しまいには女神がお初穂《はつほ》を召《め》しあがる御殿《ごてん》へ、うんこをひりちらすというような、ひどい乱暴《らんぼう》をなさいました。
 ほかの神々は、それを見てあきれてしまって、女神に言いつけにまいりました。
 しかし女神はちっともお怒《おこ》りにならないで、
「何、ほっておけ。けっして悪い気でするのではない。きたないものは、酔《よ》ったまぎれに吐《は》いたのであろう。畔《あぜ》やみぞをこわしたのは、せっかくの地面を、そんなみぞなぞにしておくのが惜《お》しいからであろう」
 こうおっしゃって、かえって命《みこと》をかばっておあげになりました。
 すると命は、ますます図《ず》に乗って、しまいには、女たちが女神のお召物《めしもの》を織っている、機織場《はたおりば》の屋根を破って、その穴《あな》から、ぶちのうまの皮をはいで、血まぶれにしたのを、どしんと投げこんだり
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