の兵をひきまとめるといっしょに、向こうの軍勢に向かって、
「実は皇后が急におなくなりになったので、われわれはもう戦《いくさ》をする気はない」と申し入れながら、その目の前で全軍《ぜんぐん》の兵士《へいし》たちに弓《ゆみ》の弦《つる》をことごとく断《た》ち切《き》らせて、さもほんとうのように、伊佐比宿禰《いさひのすくね》に降参《こうさん》をしました。
 すると伊佐比宿禰《いさひのすくね》はそれですっかり気をゆるして、自分のほうもひとまずみんなに弓の弦《つる》をはずさせ、いっさいの戦《いくさ》道具をも片《かた》づけさせてしまいました。
 建振熊命《たけふるくまのみこと》はそれを見すまして、
「それッ」と合い図をしますと、部下の兵たちは、髪《かみ》の中に隠《かく》していた、かけがえの弦を取り出して瞬《またた》くまに弓を張って、
「うわッ」と、哄《とき》を上げて攻めかかりました。
 敵はまんまと不意を討《う》たれて、総くずれになってにげ出しました。建振熊命《たけふるくまのみこと》は勝に乗じてどんどんと追いまくって行きました。
 すると敵勢《てきぜい》は近江《おうみ》の逢坂《おうさか》というところ
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