たいそうお怒《おこ》りになって、いきなり、出て行ってしまえとおっしゃるので、あなたにお別れをしにまいったのです」とお言いわけをなさいました。
 でも女神はすぐにはご信用にならないで、
「それではおまえに悪い心のない証拠《しょうこ》を見せよ」とおっしゃいました。命《みこと》は、
「ではお互《たが》いに子を生んであかしを立てましょう。生まれた子によって、二人の心のよしあしがわかります」とおっしゃいました。
 そこでごきょうだいは、天安河《あめのやすのかわ》という河《かわ》の両方の岸に分かれてお立ちになりました。そしてまず女神《めがみ》が、いちばん先に、命《みこと》の十拳《とつか》の剣《つるぎ》をお取りになって、それを三つに折って、天真名井《あめのまない》という井戸で洗って、がりがりとおかみになり、ふっと霧《きり》をお吹きになりますと、そのお息の中から、三人の女神がお生まれになりました。
 そのつぎには命《みこと》が、女神の左のびんにおかけになっている、八尺《やさか》の曲玉《まがたま》の飾《かざ》りをいただいて、玉の音をからからいわせながら、天真名井《あめのまない》という井戸で洗いすすいで、
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