哀天皇《ちゅうあいてんのう》は、ある年、ご自身で熊襲《くまそ》をお征伐《せいばつ》におくだりになり、筑前《ちくぜん》の香椎《かしい》の宮というお宮におとどまりになっていらっしゃいました。
 そのとき天皇は、ある夜、戦《いくさ》のお手だてについて、神さまのお告げをいただこうとおぼしめして、大臣の武内宿禰《たけのうちのすくね》をお祭場《まつりば》へお坐《すわ》らせになり、御自分はお琴《こと》をおひきになりながら、お二人でお祈《いの》りをなさいました。そうすると、どなたか一人の神さまが、皇后の息長帯媛《おきながたらしひめ》のおからだにお乗りうつりになり、皇后のお口をお借りになって、
「これから西の方にあるひとつの国がある、そこには金銀をはじめ、目もまぶしいばかりの、さまざまの珍《めずら》しい宝《たから》がどっさりある。つまらぬ熊襲《くまそ》の土地よりも、まずその国をあなたのものにしてあげよう」とおっしゃいました。
「しかし、高いところへ登って西の方を見ましても、そちらの方はどこまでも大海《おおうみ》ばかりで、国などはちっとも見えないではありませんか」と、天皇はお答えになりました。そしてお心の
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