しそれでも無理にお歩きになって、能褒野《のぼの》という野へお着きになりました。
命は、その野の中でつくづくと、おうちのことをお思いになり、
あの青山《あおやま》にとりかこまれた、
美しい大和《やまと》が恋しい。
しかし、ああ私《わたし》は、
その恋しい土地へも、
帰りつくことはできない。
命《いのち》あるものは、
これからがいせんして、
あの平群《へぐり》の山の、
くまがしの葉を、
髪《かみ》に飾《かざ》って祝い楽しめよ。
という意味をお歌いになり、
はしけやし、
わぎへの方《かた》よ、
雲いたち来《く》も。
(おおなつかしや、
わが家《や》のある、
はるかな大和《やまと》の方から、
雲が出て来るよ。)
と、お歌いになりました。
そして、それといっしょにご病勢《びょうせい》もどっとご危篤《きとく》になってきました。
命《みこと》は、ついに、
おとめの、
床《とこ》のべに、
わがおきし、
剣《つるき》の太刀《たち》。
その太刀はや。
と、あの美夜受媛《みやずひめ》のおう
前へ
次へ
全242ページ中139ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング