まえは、わしの言うことも聞かないで、何をそんなに泣き狂ってばかりいるのか」ときびしくおとがめになりました。
 すると須佐之男命《すさのおのみこと》はむきになって、
「私《わたし》はおかあさまのおそばへ行きたいから泣《な》くのです」とおっしゃいました。
 伊弉諾命《いざなぎのみこと》はそれをお聞きになると、たいそうお腹立《はらだ》ちになって、
「そんなかってな子は、この国へおくわけにゆかない。どこへなりと出て行け」とおっしゃいました。
 命《みこと》は平気で、
「それでは、お姉上さまにおいとま乞《ご》いをしてこよう」とおっしゃりながら、そのまま大空の上の、高天原《たかまのはら》をめざして、どんどんのぼっていらっしゃいました。
 すると、力の強い、大男の命《みこと》ですから、力いっぱいずしんずしんと乱暴《らんぼう》にお歩きになると、山も川もめりめりとゆるぎだし、世界じゅうがみしみしと震《ふる》い動きました。
 天照大神《あまてらすおおかみ》は、その響《ひび》きにびっくりなすって、
「弟があんな勢いでのぼって来るのは、必ずただごとではない。きっと私《わたし》の国を奪《うば》い取ろうと思って出
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