のお宮におまいりになって、おんおば上の倭媛《やまとひめ》に再度《さいど》のお別れをなさいました。そのとき命はおんおば上に向かっておっしゃいました。
「天皇は私を早くなくならせようとでもおぼしめすのでしょう。でも、こないだまで西の方の賊を討《う》ちにまいっておりまして、やっと、たった今かえったと思いますと、またすぐに、こんどは東の方の悪者どもを討ちとりにお出しになるのはどういうわけでございましょう。それもほとんど軍勢《ぐんぜい》というほどのものもくださらないのです。こんなことからおして考えてみますと、どうしても私を早く死なせようというお心持としか思われません」命はこうおっしゃって涙《なみだ》ながらにお立ちになろうとしました。
おんおば上は、命のそのお恨《うら》みをおやさしくおなだめになったうえ、もと神代《かみよ》のときに、須佐之男命《すさのおのみこと》が大《だい》じゃの尾の中からお拾いになった、あの貴《とうと》いお宝物《たからもの》の御剣《みつるぎ》と、ほかに袋《ふくろ》を一つお授けになり、まん一、急なことが起こったら、この袋《ふくろ》の口をお解《と》きなさい、とおおせになりました。
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