川の瀬《せ》の神さまにいたるまで、いちいちもれなくお供えものをおあげになって、ていちょうにお祭りをなさいました。そのために、やく病はやがてすっかりとまって、天下はやっと安らかになりました。

       二

 天皇はついで大毘古命《おおひこのみこと》を北陸道《ほくろくどう》へ、その子の建沼河別命《たけぬかわわけのみこと》を東山道《とうさんどう》へ、そのほか強い人を方々へお遣《つかわ》しになって、ご命令に従わない、多くの悪者どもをご征伐になりました。
 大毘古命《おおひこのみこと》はおおせをかしこまって出て行きましたが、途中で、山城《やましろ》の幣羅坂《へらざか》というところへさしかかりますと、その坂の上に腰《こし》ぬのばかりを身につけた小娘《こむすめ》が立っていて、

  これこれ申し天子さま、
  あなたをお殺し申そうと、
  前の戸に、
  裏《うら》の戸に、
  行ったり来たり、
  すきを狙《ねら》っている者が、
  そこにいるとも知らないで、
  これこれ申し天子さま。

  と、こんなことを歌いました。
 大毘古命《おおひこのみこと》は変だと思いまして、わざわざうまをひ
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