きかえして、
「今言ったのはなんのことだ」とたずねました。
すると小娘《こむすめ》は、
「私はなんにも言いはいたしません。ただ歌を歌っただけでございます」と答えるなり、もうどこへ行ったのか、ふいに姿《すがた》が見えなくなってしまいました。
大毘古命《おおひこのみこと》は、その歌の言葉《ことば》がしきりに気になってならないものですから、とうとうそこからひきかえしてきて、天皇にそのことを申しあげました。すると天皇は、
「それは、きっと、山城《やましろ》にいる、私《わし》の腹《はら》ちがいの兄、建波邇安王《たけはにやすのみこ》が、悪だくみをしている知らせに相違あるまい。そなたはこれから軍勢をひきつれて、すぐに討《う》ちとりに行ってくれ」とおっしゃって、彦国夫玖命《ひこくにぶくのみこと》という方を添《そ》えて、いっしょにお遣《つかわ》しになりました。
二人は、神々のお祭りをして、勝利を祈って出かけました。そして、山城《やましろ》の木津川《きつがわ》まで行きますと、建波邇安王《たけはにやすのみこ》は案のじょう、天皇におそむき申して、兵を集めて待ち受けていらっしゃいました。両方の軍勢は川を挟
前へ
次へ
全242ページ中104ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング