は、大多根子《おおたねこ》から五|代《だい》もまえの世に、陶都耳命《すえつみみのみこと》という人の娘《むすめ》で活玉依媛《いくたまよりひめ》というたいそう美しい人がおりました。
この依媛《よりひめ》があるとき、一人の若い人をお婿《むこ》さまにしました。その人は、顔かたちから、いずまいの美しいけだかいことといったら、世の中にくらべるものもないくらい、りっぱな、りりしい人でした。
媛《ひめ》はまもなく子供が生まれそうになりました。しかしそのお婿さんは、はじめから、ただ夜だけ媛のそばにいるきりで、あけがたになると、いつのまにかどこかへ行ってしまって、けっしてだれにも顔を見せませんし、お嫁さんの媛にさえ、どこのだれかということすらも、うちあけませんでした。
媛のおとうさまとおかあさまとは、どうかして、そのお婿さんを、どこの何びとか突きとめたいと思いまして、ある日、媛《ひめ》に向かって、
「今夜は、おへやへ赤土をまいておおき、それからあさ糸のまりを針《はり》にとおして用意しておいて、お婿《むこ》さんが出て来たら、そっと着物のすそにその針をさしておおき」と言いました。
媛はその晩、言われた
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