かにわしの子だ」とおっしゃいました。そして改めて少名毘古那神に向かって、
「おまえは大国主神ときょうだいになって二人で国々を開き固《かた》めて行け」とおおせつけになりました。
 大国主神は、そのお言葉に従って、少名毘古那神《すくなびこなのかみ》とお二人で、だんだんに国を作り開いておゆきになりました。ところが、少名毘古那神《すくなびこなのかみ》は、あとになると、急に常世国《とこよのくに》という、海の向こうの遠い国へ行っておしまいになりました。
 大国主神《おおくにぬしのかみ》はがっかりなすって、私《わたし》一人では、とても思いどおりに国を開いてゆくことはできない、だれか力を添《そ》えてくれる神はいないものかと言って、たいそうしおれていらっしゃいました。
 するとちょうどそのとき、一人の神さまが、海の上一面にきらきらと光を放《はな》ちながら、こちらへ向かって近づいていらっしゃいました。それは須佐之男命《すさのおのみこと》のお子の大年神《おおとしのかみ》というお方でした。その神が、大国主神に向かって、
「私をよく大事にまつっておくれなら、いっしょになって国を作りかためてあげよう。おまえさん一人ではとてもできはしない」と、こう言ってくださいました。
「それではどんなふうにおまつり申せばいいのでございますか」とお聞きになりますと、
「大和《やまと》の御諸《みもろ》の山の上にまつってくれればよい」とおっしゃいました。
 大国主神はお言葉《ことば》のとおりに、そこへおまつりして、その神さまと二人でまただんだんに国を広げておゆきになりました。
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 きじのお使《つか》い

       一

 そのうちに大空の天照大神《あまてらすおおかみ》は、お子さまの天忍穂耳命《あめのおしほみみのみこと》に向かって、
「下界に見える、あの豊葦原水穂国《とよあしはらのみずほのくに》は、おまえが治めるべき国である」とおっしゃって、すぐにくだって行くように、お言いつけになりました。命《みこと》はかしこまっておりていらっしゃいました。しかし天《あめ》の浮橋《うきはし》の上までおいでになって、そこからお見おろしになりますと、下では勢いの強い神たちが、てんでんに暴《あば》れまわって、大さわぎをしているのが見えました。命は急いでひきかえしていらしって、そのことを大神にお話しになりました。
 それで
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