だんにおなかがすいて来ました。男の子は道ばたのいけがきのまえを流れている、小さな川のふちにすわって、パンを食べました。そして、すきとおった、きれいな水をすくって飲みました。それから、食べあましたかたいパンの皮は、小さくくだいて、あたりへふりまいておきました。そうしておけば、小鳥が来て食べます。これはお母さんからおそわったことでした。
 男の子はふたたびどんどん歩きました。そして、ようやくのことで、たかい、まっ青な、いつも見る岡の下へつきました。男の子はその岡を上っていきますと、れいのお家がありました。しかしそばへ来て見ると、そのお家の窓はただのガラス窓で、金なぞはどこにもはまってはいませんでした。男の子はすっかりあてがはずれたので、それこそ泣き出したいくらいにがっかりしました。
 と、お家からおばさんが出て来ました。そして何かご用ですかと、やさしく聞いてくれました。男の子は、
「私《わたし》は、うちの後《うしろ》の岡の上から見える、このお家の金の窓を見に来たのです。でも、そんな窓はなくて、ただガラスがはまっているだけですね。」と言いました。おばさんは、くびをふって、
「私の家はびんぼう
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