わけにはまいりません。」
 こう言ってことわりました。王さまは、
「それはぞうさもないことだ。すぐに鍵をこしらえさせよう。」と言って、急いで上手な鍛冶屋《かじや》をおよびになりました。けれどもその鍛冶屋には、第一、お城の門の錠前にはまる鍵がどうしても作れませんでした。しまいには国中の鍛冶屋という鍛冶屋がみんな出て来ましたが、だれ一人その鍵をこしらえるものがありませんでした。
 王さまは仕方がないので、また、ウイリイをお呼びになって、
「あの門と部屋々々の戸を開けてくれ。すぐに開けないとお前の命はないぞ。」とお言いになりました。
 ウイリイは自分がちゃんとその鍵を持っているのですから、今度はちっとも困りませんでした。

       五

 王女は、門や部屋がすっかり開いたので、もう御婚礼をするかと思いますと、また無理なことを言い出しました。
「ではついででございますから命の水を一とびんと死の水を一とびんほしゅうございます。それを取りよせて下さりましたらもう御婚礼をいたします。これまでのことをみんな聞いていただきましたのですから、どうかこれもかなえていただきとうございます。」と言いました
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