すぐに王さまのところへ行って、この前のような船と、同じ人数《にんず》の水夫と、それからうじ虫と肉とパンと車と革綱《かわづな》を、先《せん》のとおりに用意しておもらいなさい。」と言いました。
 ウイリイはその仕度《したく》がすっかり出来ますと、すぐに犬と一しょに船へ乗って出ていきました。やはり前と同じように、魚たちはうじ虫をもらい、鯨は空樽《あきだる》をもらいました。それから狼《おおかみ》と熊は肉を、大男たちは、パンをもらいました。ウイリイはその大男をつれて王女のお城へいきました。お城は日の光を受けてきらきら光っていました。
 大男は、みんなでそのお城をかついで、ぞうさもなく海ばたまで持って来ました。そうすると、そこへ鯨がみんなで出て来て、それを背中へのせて、向うの港まではこんでいって、王さまの御殿のそばへおし上げました。王さまは、もうこれで御婚礼が出来ると思ってお喜びになりました。そうすると王女は、
「せっかくお城がまいりましたが、部屋の戸がみんなしまっていますから何の役にも立ちません。その鍵は私がこちらへまいります途中でなくしてしまいました。あの部屋が開《あ》かないうちは御婚礼をする
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