た。船はすぐに帆を上げて、もと来た大海《おおうみ》へ引きかえしました。王女はその途中で、お城から持って来た鍵のたばを、人に知れないように、海の中へなげすてました。犬はそれを見て、こっそりとウイリイに話しました。
ウイリイはすぐに魚にたのんで、鍵をさがしてもらいました。魚たちは、いきがけにうじ虫をたくさんごちそうしてもらったものですから、そのお礼に、みんなで一しょうけんめいに海の底をさがしました。
けれどもひろいひろい海ですから、なかなか見つかりませんでした。魚たちは血眼《ちまなこ》になって走りまわりました。そして、やっとしまいにのこぎり[#「のこぎり」に傍点]魚《うお》が鍵のたばを口にくわえて出て来ました。鍵は海の底の岩と岩との間へ落ちこんでいたのでした。のこぎり魚はそこへ無理やりに首を突っこんで引き出したものですから、すっかりあご[#「あご」に傍点]をいためてしまいました。ですからその魚のあご[#「あご」に傍点]は、今だに長短《ながみじ》かになっています。
ウイリイはその鍵を受取って、王女に知られないようにかくしておきました。
船は長い間かかってようようもとの港へ着きました。
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