「ここにある寝台《ねだい》のどれへなりとおやすみなさい。」と言いました。ウイリイはそれをことわって、門のそばへいって犬と一しょに寝ました。
 あくる朝、ウイリイは王女のところへ行って、
「どうぞ一しょにお立ち下さいまし。」とたのみました。王女は、
「いくにはいくけれど、それより先に、ちょっとこの絹糸のかせ[#「かせ」に傍点]の中から、私《わたくし》を見つけ出してごらんなさい。」
 こういって、じきそばのテイブルの上に、色んな色の絹糸のかせ[#「かせ」に傍点]がつんであるのを指《ゆびさ》したかと思うと、いきなり姿を消してしまいました。
 ウイリイはちゃんと犬から教わっているので、ほかのかせ[#「かせ」に傍点]より心持《こころもち》色の黒いのをより出し、ポケットからナイフを出して、そのかせを二つにたち切ろうとしました。そうすると、王女はあわてて姿をあらわして、
「それを切られると私の命がなくなります。よして下さい。」とたのみました。
 王女は、それから、ウイリイをもう一度|昨日《きのう》の広間へつれて行って、一しょに御馳走を食べました。ウイリイは犬から言われているとおりを守って、今度は
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