パンをどっさりやりました。」
「毒蛇と竜の前は?」
「みんなが寝ているときにとおりました。」
「あなたは一たい何《なん》のためにここへ来たのです。」
「じつは私《わたくし》の王さまが、ぜひあなたを王妃にしたいと仰《おっしゃ》いますので、はるばるお迎いにまいりましたのです。どうか私と一しょにいらっして下さいまし。」とウイリイは言いました。王女は、
「それでは明日《あす》一しょに立ちましょう。しかし、とにかく、あちらへいって御飯をたべましょう。」と言いました。ウイリイは、王女の後《あと》について立派な大きな広間へとおりました。そこには、ちゃんといろんな御ちそうのお皿《さら》がならんでいました。
 ウイリイは犬からよく言われて来たので、一ばんはじめの一皿だけたべて、あとのお皿へはちっとも手をつけませんでした。
 御飯がすむと、王女は方々の部屋々々を見せてくれました。何を見てもみんな目がさめるような美しいものばかりでした。けれども、ふしぎなことには、これだけの大きなお城の中に、さっきまで鳥になっていたこの王女のほかには、だれひとり人がいませんでした。
 王女は、しまいに立派な寝室へつれて行って
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