かみ合いかき合いしているので、ウイリイたちはそこをとおることができませんでした。
ウイリイはそれを見て車から百樽の肉を下《おろ》して投げてやりました。みんなは喜んですぐにけんかをやめてとおしてくれました。
それからまたどんどんいきますと、今度はおおぜいの大男が、これも食べものに飢《かつ》えて、たった一とかたまりのパンを奪い合って、恐ろしい大げんかをしていました。ウイリイは気をきかせて、すぐに百樽のパンをやりました。大男たちは大そうよろこんで、ぺこぺこおじぎをしました。
「私たちはちょうど百年の間けんかをしていたのです。おかげでやっと食べものが口にはいります。このお礼にはどんなことでもいたしますから、御用がおありでしたら仰《おっしゃ》って下さい。」と言いました。
ウイリイはそこから水夫たちをみんな船へ帰して、今度は犬と二人きりで進んで、いきました。
そうすると、ずっと向うの方に、きれいなお城がきらきらと日に光っていました。犬は、
「このへんでしばらく待っていらっしゃい。あのお城のぐるりには毒蛇《どくじゃ》と竜《りゅう》が一ぱいいて、そばへ来るものをみんな殺してしまいます。しかし、
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