て、間もなく大きな大海《おおうみ》の真中《まんなか》へ出ました。
 そうすると、さっきのむく[#「むく」に傍点]犬が、用意してある百樽のうじ虫をみんな魚におやりなさいと言いました。ウイリイはすぐに樽をあけて、うじ虫をすっかり海へ投げこみました。犬は、その空樽《あきだる》を鯨におやりなさいと言いました。ウイリイはそれも片はしからなげてやりました。
 魚《さかな》たちは、思わぬ御馳走《ごちそう》をもらったので、大よろこびで、みんなで寄って来て、おいしい/\と言って食べました。鯨もすっかり出て来て、樽を一つずつひろって、それをまり[#「まり」に傍点]にして、大よろこびで遊びました。
 船は、それから、どん/\どん/\どこまでも走って、しまいに世界のはての陸地へつきました。
 ウイリイは船から上《あが》ると、百だいの車へ、百樽の肉とパンとをつませて、二百|本《ぽん》の革綱をつけてそれを二百人の水夫に、二人ずつで引かせて進んでいきました。
 すると、向うの方で、大ぜいの狼《おおかみ》と大ぜいの熊《くま》とが食べものに飢《かつ》えて大げんかをしていました。みんなが牙《きば》をむき爪《つめ》を立てて
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