傍点]にまかれて、くるくる/\と、まはり花火のやうにまはりました。
 兵たいは息もつけないで、一生けんめいにボウトにかぢりついてゐました。と、たちまちボウトの中へは水が一ぱいはいりました。兵たいはびつくりして、からだをのし上げてゐますと、ボウトはそれなりぶく/\としづみかけました。水はもう兵たいの頭の上まで来ました。兵たいの目にはもう二度と見られない、あの踊の女の人の顔が浮びました。と思ふと、どこからか、
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「ぶく/\ぶく/\、
どん/\しづめよ。
死ぬんだ/\、
ぶく/\ぶく/\。」
[#ここで字下げ終わり]
と、だれかゞ、うれしさうにうたつてゐる声が聞えました。
 そのはずみに、もうどろ/\になりかけた紙のボウトは、ふいに二つにとけ割れました。
 兵たいは、それと一しよに、ぶく/\と泥水の下へしづみました。するとそこへ大きな魚がひよいと出て来て、兵たいをがぶりと一のみにのみこんでしまひました。一本足の兵たいは、
「おや、へんなところへ来たぞ。」と思ひました。
 そこは、さつきのトンネルの中よりももつと/\暗いところでした。そして足や鉄砲がそこいらへつかへて、き
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