一本足の兵隊
鈴木三重吉

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)或《ある》小さな

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)錫のさじ[#「さじ」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)兵たいだ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

    一

 或《ある》小さなお坊ちやんが、お誕生日のお祝ひに、箱入りのおもちやをもらひました。坊ちやんは、さつそくあけて見て、
「やあ、兵たいだ/\。」と、手をたゝいてよろこびました。そしてすぐに一つ/″\とり出して、テイブルの上にならべました。それは青と赤の服を着た、小さな鉄砲をかついだ、小さな錫《すず》の兵たいでした。すつかりで、ちようど二十五人ゐました。
 これだけの兵たいは、もと、おもちや屋が或一本の錫のさじ[#「さじ」に傍点]をつぶしてこしらへたので、言はゞ同じ血を分けた兄弟でした。それがみんなちやんと気をつけをして、まつ正面をにらんで立つてゐます。
 ちよつと見ると、二十五人が、寸分ちがはない同じ兵隊のやうに見えますが、しかし、よく見ると、中
次へ
全13ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング