にたつた一人、足が一本しかない兵たいがゐます。これはこしらへるときに、一番しまひで錫が足りなかつたのでした。
 でもその兵たいは、一本足のまゝ、ほかの兵たいと同じやうに、まつすぐに立つてゐました。
 テイブルの上には、そのほかに、まだいろんなおもちやがどつさりならんでゐました。その中で人の目をひく、一ばんきれいなおもちやは、ボール紙で出来た立派な西洋館でした。その部屋/″\の窓は、ちやんと切りぬいてあつて、のぞくと部屋の中がすつかり見えました。それから正面の入口のまん前には、ひくい青い立ち木にかこまれた円い池があります。その他は鏡で出来てゐるのでした。その中には、いくつかの蝋《らふ》細工の小さな白鳥が、水に影をうつしておよいでゐます。それはまつたくきれいでした。
 しかしその他よりもまだもつときれいなのは、入口の石段の上に立つてゐる女の人でした。それはボール紙を切りぬいてこしらへたのですけれど、それでも着物は上等のいゝ布《きれ》で出来てゐて、くびから肩へかけて、細い青いリボンの襟《えり》かざりがつけてあります。その襟かざりは、きら/\した金紙でこしらへた、その女の人の頭ほどもあるやうな
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