足もとに落ちてゐるのでした。二人はもうすこしでそれをふみつけるところでした。それでもとう/\その兵たいが見つけ出せませんでした。一本足の兵たいは、
「もし/\、こゝにゐます。こゝに」と泣き声を出しかけました。しかし軍服を着た兵たいが往来で泣いたりしては見つともないので、むりにがまんして、口をくひしばつてゐました。そのうちにふと雨がばら/\落ち出しました。間もなく雨はざあ/\と、どしやぶりになつて来ました。
その雨がやつと上ると、小さな男の子が二人とほりかゝりました。
「あゝ、あすこにあんな兵たいが落ちてら。あれをボウトに乗せて走らしてやらうね。」と、二人はかう言つて、さつそく新聞紙ををりたゝんで、小さなボウトをこしらへました。
往来のわきのどぶには、泥《どろ》の雨水がどん/\流れてゐました。二人の子どもは、紙のボウトへ一本足の兵たいを乗せて、それをどぶ[#「どぶ」に傍点]へ流しました。そして二人で手をたゝきながら、わい/\言つて、ついて走りました。水はすばらしい勢《いきほひ》で流れました。とき/″\大きな浪《なみ》がづしんとゆれました。そのたびにボウトはくる/\まはつて、今にもひつ
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