出しました。
「おい/\一本足の兵たい、おまへは何をじろ/\見てるんだい。柄でもない。よせ/\。だれがお前なぞと仲よしになるものか。」
黒い鬼はかう言つて鼻で笑ひました。一本足の兵たいは、鬼のいふことなんかちつとも聞えないやうに、平気で踊を見てゐました。
「ふゝん、勝手にしろ。だが明日《あした》の朝になつておどろくな。」
黒鬼はそれを見て、ぷん/\怒つてかう言ひました。
二
そのあくる朝が来ました。
坊ちやんはのこ/\出て来て、れいの一本足の兵たいをお部屋の窓のところへ立たせました。すると、それは黒鬼のしたことか、それとも風のせいか、その窓のがらす戸がふいにがたんとはねあきました。そのはずみに一本足の兵たいは、いきなりぽんとはねとばされて、その三階の窓から、下の往来の石だたみの上へ、まつさかさまに落ちました。くる/\/\、すとん。
「おゝ、いたゝ。」
兵たいのかついでゐた鉄砲の先は、しき石の間へぐいとつきさゝりました。坊ちやんは、
「あッ。」と言つて、ねえやと二人で、往来へ下りていきました。
二人は一本足の兵たいを一生けんめいにさがしました。兵たいは二人のぢき
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