つんで来るために、馬を三十頭も用意して出かけました。そしてイドリスの言葉どほり、盗まれた品々を一つもかゝさず、みんなとりかへしました。
 王さまは、びつくりして喜んで、イドリスには、馬一頭へ銀貨をつめるだけつませて、それをごほうびにくれました。
 イドリスのおかみさんは、そのたいそうな下されものを見ると、とび上つてよろこびました。
「ごらんなさい。神さまはやはり、はたらくものをおたすけになるのです。みんなもとをいふと、あなたがあたしのいふことを聞いて、墓場へはたらきに出たからですよ。だから金の指輪も手にはいり、しまひには、こんなたいそうなお金持になつたのです。」と、得意になつて、はしやぎたてました。
 しかしイドリスは、なほ/\気が気ではなくなりました。こんどまた王さまから何をかさがせといはれたらいよ/\命がなくなるわけです。なくなつたりしたものが、二どゝ、あんなにすら/\出て来るはずもありません。
 王さまは、それからは、よくイドリスをよんで、ごちそうをしたり、イドリスをおともにつれていろ/\のところへ出かけたりしました。町中のものはイドリスのことを、この上なく、うらやましく思ひまし
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