つんで来るために、馬を三十頭も用意して出かけました。そしてイドリスの言葉どほり、盗まれた品々を一つもかゝさず、みんなとりかへしました。
王さまは、びつくりして喜んで、イドリスには、馬一頭へ銀貨をつめるだけつませて、それをごほうびにくれました。
イドリスのおかみさんは、そのたいそうな下されものを見ると、とび上つてよろこびました。
「ごらんなさい。神さまはやはり、はたらくものをおたすけになるのです。みんなもとをいふと、あなたがあたしのいふことを聞いて、墓場へはたらきに出たからですよ。だから金の指輪も手にはいり、しまひには、こんなたいそうなお金持になつたのです。」と、得意になつて、はしやぎたてました。
しかしイドリスは、なほ/\気が気ではなくなりました。こんどまた王さまから何をかさがせといはれたらいよ/\命がなくなるわけです。なくなつたりしたものが、二どゝ、あんなにすら/\出て来るはずもありません。
王さまは、それからは、よくイドリスをよんで、ごちそうをしたり、イドリスをおともにつれていろ/\のところへ出かけたりしました。町中のものはイドリスのことを、この上なく、うらやましく思ひまし
前へ
次へ
全14ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング