つて、そのあくる晩、三十六人の手下と一しよに、イドリスの家《うち》へ出かけました。そして、おそる/\地びたにすわつて、
「どうぞイドリスさま、私《わたし》どもの名まへだけは、どこまでもかくしとほして下さいまし。そのかはり、王さまのお倉から盗み出しましたものは、そつくりそのまゝ、一と品ものこらずおかへし申します。それは、これ/\かういふ空地にうめて、その上に、白い石が目じるしにおいてあります。」と白状して、平つたくなつてあやまりました。
イドリスは、それこそ夢ではないかと、びつくりしました。しかし、うはべでは、あくまで賢者らしい顔をして、
「よし/\、よく自白をした。それでは、おまへたちの命をたすけるために、名まへだけは言はないでおいてやらう。だが、ほり出して見て、一と品でも不足してゐたら、ようしやなく、おまへたち四十人をのこらずしばり上げるぞ。」と、おどしつけてかへしました。
イドリスはあくる朝さつそく王さまのところへ出かけて、盗難のお品は、一つのこらず、これこれかういふところにかくしてあるやうに思はれます、すぐにほつて見て下さいましと言ひました。
役人たちは、出たものをすつかり
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