ダマスカスの賢者
鈴木三重吉
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)或《ある》とき
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ほり[#「ほり」に傍点]の
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いよ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
一
むかし、ダマスカスといふ町に、イドリスといふなまけものがゐました。貧乏なくせに、はたらくことがきらひなのですからたまりません。或《ある》とき、もういよ/\食べるものもなくなり、売りはらふものと言つたつて、ぼろッきれ一つさへないはめになりました。おかみさんは、
「これではもう二人でかつゑて死ぬばかりです。後生だから、どうぞ今日からお金をもうけに出て下さい。」と、泣いてたのみました。
「お金をもうけるつて、一たい、どうすればいゝんだい。わしは、これまで商ばいをしたこともないし、てんであてがつかないよ。」と、イドリスは、生あくびをしながらかう言つて、長いあごひげをしごいてゐました。
「では、ためしに私《わたし》のいふとほりをしてごらんなさい。たゞお墓場
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