宮へ四十人のどろぼうがしのびこんで、お倉の一つの、だいじな宝物を、すつかり盗み出してしまつたのださうで、役人たちが火のやうになつて八方を調べても、犯人があがらない、それでイドリスに、その盗まれた品物のかくしてあるところを考へあてゝくれといふお話です。
 イドリスは、こまつて顔をふせてゐました。王さまはつゞけて、
「では四十日間のいうよ[#「いうよ」に傍点]をあたへるから、かならず見つけ出してくれ。このくらゐのことは、おまへにとつては何でもあるまい。だから、もし四十日たつても返答をしないと、それはおまへが、わざとわしをいぢめてこまらすものとみとめ、すぐにくびをはねてしまふから、そのつもりでゐろ。」と言ひわたしました。
 イドリスはまつ青《さを》になつてかへつて来ました。王さまのところへいつてどうしたのですと、おかみさんが聞き/\しても、イドリスは返事をさへしません。
「えゝ、うるさい。おまへに言つたつてどうなるものでもない。盗賊が四十人ばかりで王さまのお倉の宝ものを盗み出したのだ。わしは、その品ものゝありかを、四十日間にさがし出さないと、首をとられてしまふのだ。」
 イドリスは、しまひに
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