た。
夕方になりますと、イドリスは、さも、じぶんがどこからか見つけ出して来たやうな顔をして、指輪をもつていきました。王さまは大そうよろこんで、いろ/\とほうびの品ものを下さり、これから先も、こまつたことが出来わいたら、おまへにたのむぞと言つて、しきりにイドリスのふしぎな眼力をおほめになりました。
イドリスのおかみさんは、イドリスが、りつぱなごほうびを、どつさりいたゞいて来たので、びつくりしてよろこびました。しかし、イドリスは、うれしくも何ともありませんでした。これでは王さまに何かのことがおありのときには、きつとまた私《わたし》をおよびつけになるにちがひない、あの指輪だけは、じぶんがひろつてゐたので、すぐにおわたししたやうなものゝ、このつぎ、何かをさがせの、見とほせのと言はれたら、ギヤフンとまゐるよりほかはない。そんなことから、あの指輪をわしが盗んでゐたことまで、ばれでもしたら、どんなひどいお仕置に合はないともかぎらない、かう思ふと、イドリスは、その日から、じつとしてゐられないほど心配でした。
と、そのうちに、やつぱり王さまから、および出しが来ました。
それは、二三日前の晩に、王
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