一面にはごみ[#「ごみ」に傍点]くずや、いろんなきたならしいものが、ごたごたすててあります。犬はその空地の片すみにころがっている、底も天井もぬけた、古ぼけた穀物だる[#「だる」に傍点]の口もとにすわりこみました。たるの中には、かんなくずや砂なぞがくしゃくしゃにはいっています。そのかんなくずの上に、何《なん》だかしゅろ[#「しゅろ」に傍点]であんだ、ぼろぼろの靴《くつ》ぬぐいをまるめ上げたような、そういう色とかっこうをしたものがころがっています。犬は、そのへんなもののまえに、くわえて来た肉のきれをおいて、くんくんなきつづけました。しかしそのへんなものが動き出しもしないので、犬はたまりかねたように、前足をあげて、おい、おきろ/\と言わないばかりにつッつきました。
すると靴ぬぐいのようなものは、むくむくと半《なかば》たち上って、よろよろと肉のきれのそばへ来て、たおれるように腹ばいました。栗色をした、よぼよぼの犬です。病気でひどくよわっていると見えて、やせ犬のくれた肉のきれをものうそうに二、三どなめまわしましたが、それを食べる力もないように、そのままぐんなりと顔を下げてしまいました。こちらの
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