やどなし犬
鈴木三重吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)或《ある》小さな町
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)或|小家《こいえ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)え[#「え」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)あとから/\
−−
一
むかし、アメリカの或《ある》小さな町に、人のいい、はたらきものの肉屋がいました。冬の半《なかば》の或寒い朝のことでした。外《そと》は、ひどい風が雨を横なぐりにふきつけて、びゅうびゅうあれつづけています。人々は、こうもりのえ[#「え」に傍点]にかたくつかまりながら、ころがるようなかっこうをして、つとめの場所へ出ていきます。肉屋は、店のわかいものたちと一しょに、かじかんだ手で、肉切《にくきり》ぼうちょうをといでいました。
すると、店のまえのたたきのところへ、一ぴきのやせた犬がびしょぬれになって、のそりのそりとやって来ました。そして、はげしいしぶきの中に、のこりとすわって、店先に下《さが》っている肉のかたまりを、じ
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