のの一人をつれて、ついていきました。夕方は人どおりも少ないために、肉屋と店のものとは、犬のすがたを見失うこともなく、歩いたり走ったりして、どんどんついていきました。
「何だ。どこまでいくんだろう。え、おい。ずいぶん遠くまで来たじゃないか。」
 犬はまだどんどんいって、とうとう町のはずれまで来てしまいました。そこには、ばらばらに小さい家が建ちぐさったりしている、どすぐろい、ひろい砂地がありました。そのあたりは、冬は風がはげしくて、砂がじゃりじゃり家々の窓や、とおる人の顔へふきとんで来ます。
「おお、ひどい砂だ。」と言いながら、肉屋は犬のあとから、そこのところをななめにつッきってかけていきました。犬は肉屋たちがおっかけて来ていることには気がつかないらしいのです。そしてそこいらの或|小家《こいえ》のところまで来ますと、さもかえるところまでかえったというように、その家のうしろの方へのそのそはいっていきました。
 肉屋たち二人は、そっといってのぞいて見ました。家のうしろは、ちょっとした空地《あきち》で、まん中に何かをたてようとした足場らしいものが、くずれかけたまま、ほうりっぱなされており、ぐるり
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