「どうしたんだ。」と、町中のものや通行人たちがどやどやかけつけて来ました。
「こいつらがおれんとこのあの犬を、二ひきともひっくくりゃァがったんだ。下《お》りろ、きさま。」と肉屋は巡査の足をつかまえて、むりやりに引きずり下《おろ》しました。人々はみんな、あの二ひきの犬の同情者であるのは言うまでもありません。みんなは、
「なぐれなぐれ。」と言って、巡査をとりかこみました。そのうちに、気の早い男が、大きな大《おお》おの[#「おの」に傍点]をかかえて来て、がちゃん/\と馬車をこわしはじめました。巡査はみんなにつきとばされ、けりつけられて、よろよろしながら、そばの或店の中へにげこみました。その間《あいだ》に、またある一人が鉄の棒をもって来て、がちゃんがちゃんと馬車をたたきつけ、とうとうふたりで鉄ごうしをやぶってしまいました。中の犬たちはおおよろこびでとび出して、八方へにげていきました。肉屋の二ひきの犬は肉屋の足もとへとんで来て、くんくん言ってよろこびました。
 こんなさわぎがあってから、二、三年の後《のち》です。ふたりは、やはり毎日一しょに出て来ましたが、そのうちに、もと病犬だった方は、だんだ
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