んに皮《ひ》ふ[#「ふ」に傍点]のつやがなくなり、のちには、あばら骨がかぞえられるほどやせて来て、食べものもろくに食べなくなり、店先へ出て来ても、ただ一日じゅう、しき石の上にごろりとなったきりで、ときには、何時間となく、こんこんと眠りつづけています。目も急にかすんで来たようです。肉屋はくびをかしげて考えました。
夕方になると、その犬は、もうひとりの犬について、よちよちと寝どころへかえっていきます。ところが或とき、犬は一ぴきだけ来て、そのやせた犬は一日《いちんち》すがたを見せない日がありました。出て来た方は、夕方になると、もらった肉のきれを食べないでくわえてかえりました。
「ふふん、とうとうまた寝ついてしまったな。」と言い言い、肉屋は、あとからついていって見ました。犬の寝場所は、もとのところは、家でもたちつまっておいたてられたと見えて、先《せん》とはちがった場末《ばすえ》の、きたない空地《あきち》にうつっていました。病犬は、そこにころがっている古《ふる》材木の下にこごまって、苦しそうに腹でいきをしていました。
肉屋は、あくる日、大きなあきだる[#「だる」に傍点]をもって来て、わらをど
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