あけて、その赤いひもをぢいつと見てゐました。お母さまはとき/″\立つて、そのひもをこちらの方へ少しひいて見ました。
 さうすると、すゞちやんの黒い目《めんめ》は、すぐに、はすかひにこちらの方を見ました。こんどは向うへやると、すゞちやんはまた黒目をうごかして、そちらの方を見ました。鈴はひもがうごくたんびにりん/\となりました。お母さまは、
「まあ、ちやんと見えるのですね。」と言つて、うれしさうに笑ひました。お父さまは、こちらのいすにかけて見てゐました。お部屋の三方には、まつ白な、うすいカーテンがかゝつてゐました。その中に、すゞちやんの着てゐる赤いおべゝと、つるした赤いひもとが、きわだつてまつ赤に見えました。


    三

 お父さまは、それからまた或《ある》日、すゞちやんを、ぽつぽのまへへだいていきました。ぽつぽはよろこんで、
「すゞ子ちやん、すゞ子ちやん、こんちは。ぽッぽゥ、ぽッぽゥ。」と言つて、おじぎをしました。
 お父さまは、
「こつちよ/\、すゞちやん。こつちをごらんなさい。」と言ひながら、すゞちやんをかご[#「かご」に傍点]のまへにすゑるやうにして、ぽつぽを見せようとしまし
前へ 次へ
全13ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング