小石川のお祖母ちやまとお二人で、早くすゞちやんが生まれるやうに、いのつて下さいました。
 すると、六月の或《ある》晩でした。お母さまには、あすはすゞちやんが生れるといふことがわかりました。お父さまも、それはよろこんで、すぐに小石川のお祖母ちやまに来ていたゞきました。
 でも、ぽつぽにだけは、みんなだまつてゐました。ぽつぽがよろこんで、あんまりおほさわぎをするとうるさいから、あとでそつと見せてやることにしたのでした。
 その晩お母さまは、すゞちやんの寝る小さな赤いおふとんをちやんとしいて、そのそばへやすみました。
 お父さまがあくる朝日をさまして見ますと、ちやんとすゞちやんが生まれてゐました。まつ赤《か》なお顔をした、小さい赤ん坊のすゞちやんは、一人で赤いおふとんの中に、すや/\とねてゐました。お父さまは、よろこんで、
「お祖母さま、小さなすゞちやんが生れて来ましたよ。」と言つてよびました。お祖母ちやまは、かけていらしつて、
「あら/\かはいゝすゞちやんね。」と言つて、それは/\およろこびになりました。すゞちやんはそれからしばらくたつて、はじめてお母さまにお乳をもらひました。
 すゞちや
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