たにたお笑いになって、
「それでは、こちらへお出《い》でなさい。」とおっしゃりながら、王子を、王女のお部屋へおつれになりました。王女はにこにこしながら出て来て、あいそうよく王子をむかえ入れました。王子は王女があんまりうつくしいので、目がくらんで、しばらくぼんやり立ちつくしていました。王女は、
「どうぞ。」と言って、一ばんきれいないす[#「いす」に傍点]のところへつれていきました。
王さまは二人をそこにのこして、あちらへいっておしまいになりました。
その間《あいだ》にぶくぶくは、そっと来て、王女のお部屋の戸の外へしゃがみました。それと一しょに、長々《ながなが》と火の目小僧とは、こっそりと外《そと》へまわってお部屋の窓の下へかくれました。
王女は王子に向っていろんなお話をしました。王子はそのお相手をしながら、一生けんめいに王女のそぶりに気をつけていました。するとやがて王女は、ふと話をやめて、そのままだまってしまいました。そしてしばらくたつと、
「ああねむったい。なんだかまっ赤《か》なものが、もうッと、まぶたの上へかぶさるような気がします。しばらくごめん下さい。」と言いながら、いきなり
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