れを聞くと、
「どういたしましょう。もう私の力ではどうすることも出来ません。どうかして、この昼を夜にする工夫はないものでございましょうか。」と言いました。すると長々は、
「ああ、それならぞうさもありません。」と言いながら、からだをするするのばしました。そして、あッと言う間《ま》に天までのび上りました。みんなはびっくりして、何をするのかと見ていますと、長々はたかいたかい雲の中で帽子をぬいで、その帽子を、ひょいとお日さまの片がわへかぶせました。すると下界は王子たちのいる方に光がさすだけで、兵たいがかけて来る方の半分は、ふいに夜のようにまっくらになってしまいました。
王子たちは、兵たいが暗がりでまごまごしている間に、
「さあ、走れ走れ。」と言いながら、ふたたび王女の手をとって、おおいそぎでかけ出しました。長々は王子たちが、いいかげん遠くまでにげのびたのを見すまして、ひょいと帽子をはずして、頭にかぶりました。そして一と足で一里またげる、その長い足で、ひょい/\/\と、またたく間に王子のそばへ追いつきました。
それからみんなは、また一しょに走りつづけました。そのうちに向うの方に、王子の御殿の
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