く、かけつづけにかけた後《のち》、やっと安心して一と休みしました。王子は、
「どうだ、まだ追っかけて来るか見てごらん。」と、火の目小僧に言いつけました。火の目小僧は、さっそくのび上って見ますと、兵たいが今やっと、さっきの林をくぐりぬけて、またどんどん砂けむりを立ててかけつけて来るのが見えました。王子は、
「では、ぐずぐずしてはいられない。さあにげよう。」と言って立ち上りました。すると王女は、
「いえいえだいじょうぶでございます。もうすこし休んでいらっしゃいまし。」と言いながら、目から涙を一としずくながして、
「さあ、涙、大きな河になっておくれ。」と言いました。するとたちまちそこへ大きな大きな河ができました。王子はそれで安心して、また王女の手をとってにげました。
 みんなは、長い間どんどん走りつづけに走って、もうこれならだいじょうぶだろうと思いながらしばらく休みました。
「どうだ、まだ追っかけて来るか。」と、王子はもう一ど火の目小僧に見させました。火の目小僧は後《うしろ》を向いて爪立《つまだ》ちをして、
「おや、とうとうあの河をわたって、また追っかけてまいります。」と言いました。王女はそ
前へ 次へ
全26ページ中20ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング