」
火の目小僧は後を見るなりこう言いました。王女はそれを聞いて、
「では、きっと、お父さまの兵たいが、あなたがたを殺しにまいりましたのでしょう。ああいいことがございます。ちょっとおまち下さいまし。」と、息を切らしながらこう言って、王子たちに手をはなしてもらいました。そのうちに騎兵は、
「うわあッ。」と、ときの声を上げて、王子たちのじき後まで追いつめて来ました。王女は王子にけががあってはたいへんだと思って、おおいそぎで、かぶっている顔かけを引きはなしました。そのときちょうど、風は兵たいの方へ向けてふいていました。王女はその顔かけをいそいで後へなげつけて、
「さあ、生《は》えておくれ。この顔かけの糸の数ほど生えておくれ。」と、おまじないの言葉をとなえました。すると、たちまちみんなのじき後へ、大きな木が、一どにぎっしり生えのびて、またたく間《ま》に大きな大深林《だいしんりん》が出来ました。兵たいたちは、
「おやッ。」と言ってまごまごしながら、その木の間をむりやりにくぐりぬけようともがきました。王子と三人の家来とは、そのひまに、王女をつれて一しょうけんめいににげのびました。
みんなはしばら
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