ると、或王さまのところに、鹿のようにきれいな、そしてたかのように勇《いさま》しい、年わかい王子がいました。この王子がその話を聞いて、私ならきっと眠らないで番をして見せる、一つ行ってためして来ようと思いました。
しかしお父さまの王さまは、王子がうっかり眠りでもしたらたいへんですから、いやいやそれはいけないと言って、どうしてもおゆるしになりませんでした。そうなると王子はなおさらいきたくて、毎日々々、
「どうかいかせて下さいまし。たった三晩ぐらいのことですもの。かならず眠りはいたしません。」と言いながら、王さまにつきまとって、ねだりました。さすがの王さまもとうとう根《こん》まけをなすって、それでは、どうなりとするがいいと、しかたなしにこう仰《おっしゃ》いました。
王子は大よろこびで、お金入れへお金をどっさり入れて、それから、よく切れるりっぱな剣をつるすが早いか、お供もつれないで、大勇《おおいさ》みに勇んで出かけました。
二
王子は遠い遠い長い道をどんどん急いでいきました。
すると二日目に、途中で一人のふとった男に出あいました。
その男はよっぽどからだがおもいと見え
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