に、小さな一ぴきの魚が、半煮《はんに》えになって、ひょこりと、地面へはね上《あが》りました。魚はもうあつくて/\たまらないので、土にふれると、すぐにもとの王女になりました。王子は大よろこびで、そばへかけつけて
「どうです、とうとう三晩ともちゃんとつかまえましたでしょう。ではおやくそくのとおり、あなたは私のものですよ。」と言いました。王女はまっ赤《か》な顔をして、
「どうぞおつれになって下さいまし。お父さまもあきらめて、あなたのおっしゃるとおりになりますでしょう。」と言いました。王子はそのときはじめて、
「じつは私は、これこれこういう王子です。」と言ってじぶんのことを話しました。王女はそれを聞かないさきから、だれとも分らないその王子の立派な人柄に、ないないかんしんしていました。それがりっぱな王子だと分ったので、おむこさんとして何一つ申し分がありません。王女は大よろこびで夜があけるとすぐに王さまのところへいって、ゆうべのことをのこらずお話《はな》しました。
すると王さまは、たった一人の王女を、しらない人にくれるのがおしくて/\たまらないものですから、王子にあうと、王さまらしくもなく二まい
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