ところが、うんわるく、今晩もそのはずみに、ひょいと火の目小僧の鼻の先にぶつかりました。火の目小僧はびっくりして、
「しまった。にげたぞ。」と言いながら、いきなりしゅうしゅうと両方の目から火をふきました。
 するとはえ[#「はえ」に傍点]はたちまち小さな魚にばけて、向うの泉の中へとびこみました。火の目小僧はそれを見とどけて、長々とぶくぶくと王子とをよびおこしました。みんなはびっくりして、はねおきて、火の目小僧と一しょに、その泉のそばへかけつけました。

       六

 いって見ると、その泉というのは、まるでそこ[#「そこ」に傍点]も見えないほどの深い深い泉でした。ところが長々は、
「なあに、おれがつかまえて見せる。」と言いながら、水の中へ頭をつきこんで、するするとからだをそこ[#「そこ」に傍点]までのばしました。そして両手でもって、水のそこ[#「そこ」に傍点]をすみからすみまでのこらずかきさがしました。すると魚はどこへかくれているのか、いくらかきまわしても、さっぱり見つかりません。ぶくぶくはそれを見て、
「おい、おどき。いいことがある。」と言いながら、長々をもとのからだにちぢ
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