うに、
「ああねむいこと。まあ、どうしてこんなにねむくなるのでしょう。何だか、まっ赤《か》なものが、もうっと両方の目の上にかぶさるような気がします。ちょっとやすみますからごめん下さい。」と言いながら、ふらふらと立ち上って、長いすの上に横になるなりもうすやすやと寝入ってしまいました。
王子は今晩はその手にのるものかと思いながら、テイブルに両ひじをついて、たかのように目を光らせて、一生けんめいに王女の顔を見すえていました。するとそのうちに、王子はまたひとりでに、まぶたがおもたくなって、とうとう今晩もまたねこんでしまいました。
すると、ちょうどおなじときに、あれほどいばっていた長々や、ぶくぶくや、火の目小僧も、みんな一どにこくりこくりといねむりをはじめました。
王女はさっきから、上手にねたふりをして、王子たちが寝入るのをまっていたのでした。
王子はぐうぐうといびきをかいて、まるで石のようにねむりこんでいます。
王女はそれを見ると、にこにこ笑いながら、そうっとおき上りました。そしてこんどこそは、だれにも感づかれないように、ひょいと小さな蠅《はえ》にばけて、すうっと窓からとび出しました
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